又吉直樹『夜を乗り越える』から

【わたしにとっての読書】

又吉直樹さんの『夜を乗り越える』という本を読んだ。「どうして本を読むのか」を真剣に考えた本だった。

 

又吉さんの幼少時のエピソードや、衝撃的な読書体験が綴られている。青年になり、お笑い芸人をやりながらも貴重な読書体験を重ねていく。きっとそうして「夜を乗り越えた」。

 

私にとっての読書がまさに夜を乗り越えるためのものであった。そして多くの読書家がこの本を読んだなら、そう感じるに違いない。

 

芥川を読んで「頭のなかでいっぱい喋ってるやん」と思った。太宰を読んで、あけすけに恥ずかしい自分を露呈し自分自身を蔑むことを見せつけられた。そしてその二人に「その夜を乗り越えてさえいてくれたら」と考えずにはいられない。

 

わたしは思う。つまずかない生き方などない。絶望でしかない世界もあるだろうが、過去を振り返る絶望なら、まだ未来はあると。

私にとっての読書とは、いつもそのことに気付かせてくれるものであった。時代は変わっても、人間の本質は変わらない。喜びも悲しみも感動も、あらゆることが読書体験によって、わたしに降り注ぎ未来をつむいで行く。